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this  that  it  仲間外れはどれ?

What is this?
It’s a pen.

中学の初めのころに習うであろうこのやりとりで、「なぜ最初はthisなのに答えではitになるの?」と思った中学生はたぶんすごい天才というか、勘がいい子でしょう。私はぜんぜん疑問に思わず、そういうものなのだ、とだけとらえていました。
え~、当然でしょう、だって…と、「分かっている人」も多いかもしれませんが、自分自身ふくめ、自分が教えてきた無数の生徒さんたち(特に初心者)は、分かってない人がほとんどでした。
中学生には説明が面倒なので「そういうものなのです」「ルールです」で済ませればいいのかもしれませんが、そのまま誤解したままでいると、やっぱり後になって混乱するんです。もしかして、後になって大学などで英語以外の言語(西洋語)を習うとそこで分かる人もいるかもしれません。スペイン語とかでも同じことがありますから。

thisとthatは、itとは仲間ではありません。違う性質の語です。
多くの人が、日本語の「これ、あれ、それ」をあてはめて「this = これ」「that=あれ」「it=それ」と思っているかもしれませんが、それも違うのです。無理やり日本語で言うなら
「this = これ」
「that = あれ、それ」
「it =     」
     ↑なぜ空白?

it は日本語に当てはまる言葉が実はないのです。「それ」というのはあくまで便宜的な訳。
天気を表すときは主語はitですよ!と習ったことはあるかと思います。
It is fine today. きょうは天気がいいです。
Itは「天気」でもなければ「今日」でもない、というのは分かりますよね。だからといって「それ」とも言えない。
itは訳さないときもある、と教わります。でも、なにそれ?です。場合によって訳したり訳さなかったり?
itは、実はいつだって訳さない、のです。

What is this? 「これは何ですか」
It is a pen. 「それはペンです」
でも、本当に会話でいちいち「それはペンです」なんて言いますか?「これは何ですか?」「ペンです」で十分でしょう。
ヘンテコな形のペンで
「ああ、それ? それはね、実はペンなんですよ」
というニュアンスであればむしろ
What is this? 
Oh, that’s a pen!
となるかもしれません。

つまり、itは日本語には対応するものがないし、当然正確な訳語もない、というシロモノなのです。
じゃあなんなの? については後ほど。

This is a pen! は意味のない英文 (this/that/itの話②)

私がこどもの頃、最初に習う英文といえばこれでした。This is a pen.
「おれ英語しゃべれるぜ、ジスイズアペーン」
などとギャグにも使われる定番ともなっていました。
今でも、英語と言えばThis is a pen.が思い浮かぶ人は多いのではないでしょうか。

けれどこの英文、実用としてはほとんど「使い物にならない」のです。 ジスイズアペーンと言われても、言われた方は普通、 「……。…で?」 としか言いようがありません。いや、別に町中でいきなり叫ばれたわけでなくても、です。 目の前に実際にペンがあり、それを指してこう言う、という、「まったく正しい」文脈であっても、です。

かつての英語学習はもう第一歩目から、つまづいている、いや、どちらかというと「つまづかされている」状態だったのですね。つまづいたコドモを助け起こすどころか、つまづいたことにすら気づかないまま学習は進んでいき、コドモはいわば立ち上がらずに這ったままズルズルジタバタしていたようなもんです。

前項でも書きましたが、もう一度言います。
This = これ That =あれ It =それ  ではない!
…のです。

日本語のいわゆる「こそあど」(これ、それ、あれ、どれ、ここ、そこ……etc)と英語の指示詞はそのシステム自体が異なっているのです。

日本語は
「自分に近い」=「こ」
「相手に近い」=「そ」
「自分からも相手からも遠い」=「あ」
という3つの分け方をしているのに対し、英語では
「自分に近い」=this(these)
「自分から遠い(相手に近い場合もそうでない場合も含む)」=that(those)
の2つにしか分けていません。

ここで少し話が変わりますが、初対面の人同士を紹介するとき、主語としてはやはりthisを使います。
“Jane, this is my friend, Peter.”
のように。He is my friend Peter.ではなくて。
時々こう言うのを聞いて、
「人に対して『これ』なんて言って失礼じゃないんですか!」
とか言う人がいますが、もちろん失礼じゃありません。彼らには自分が『これ』などとモノ呼ばわりされたようには聞こえていません。日本語に訳すならこの場合は
「ジェーン、こちらは私の友人のピーターです」
てな感じでしょう。

もうひとつ、たぶん誰でも知っているだろうが、電話で名乗るときは
I’m Leila.とは言わず
“Hello, this is Leila.”
と言います。これもやはり日本語にするとすれば「こちらはレイラです」というところでしょう。

どうして、人を指しているのに、IとかHeとかSheとかの「人称代名詞」ではないのでしょう?

ここに it のヒミツを解くカギも隠されています。
つまり it はどちらかといったら、I や He や She の仲間であり、this や thatとは「シマが違う」のです。

上に書いた、初対面の人同士を紹介する場合、最初はThis is~と言いますが、その後はすぐにHeとかsheに切り替わります。
電話でも、最初に名乗った後は普通にI~で話を続けます。電話だからといっていつまでも自分のことをThisと言っているわけではないのです。

つまり、人であるかモノ(あるいは言葉や概念や行為である場合も)であるかに関わらず、

this やthat は「(初出を)紹介する」機能を持った”スポットライト”の語なのです。

それまで暗がりにあって存在が分からなかったものに、ぱっとライトを当てる。相手はライトが当たったモノに、ほい、と目を向ける。そのための言葉です。注目してもらうためには「位置」も問題ですが、ともあれ話者の近くか遠くかだけが区別されます。手や指や、あるいは目線などで「どれを指しているのか」を分かってもらう必要も当然あります。

それにたいし(あとで改めて説明しますが)、it や he や she や I など普通の代名詞には、そのようにスポットライトを当てる機能はなく、「すでにスポットライトが当たっている」(話している同士が互いに分かっている)人やモノしか受けることができません。
逆に、すでにスポットライトが当たっているものには、通常は再び当てる必要がないのです。

だから。
“What’s this?”
なにかを指し示しながら尋ね、たずねられたほうはもう指し示す必要がないので
“It’s a pen.”
と答えればよいということになります。主語が要らない日本語の場合はItに当たる語も要らないわけですが。
(このことはまた項を改めて説明します)

相手がまだ認識していないモノ(スポットライトが当たっていないモノ)をいきなり持ち出してきて、聞かれてもいないのに
“This is a pen.”
と言ったら相手は
「はい?で?」
となってしまうというのがこれでお分かりになるでしょう。ライトをあてて紹介したら、その後の展開が必要になるのです。

ただしもちろん、この文を使う状況が皆無なわけではないですよ。
たとえば、いろいろなものが雑多にあって、それぞれが何であるのか説明していく必要があるようなとき…
そう、まさに「英語の授業のはじめの頃、教室にあるモノの英語名を説明する」
ような場合にはこの形の文が成り立つでしょう。
This is a pen, This is a book, That is a desk…などと次々指し示しながら紹介していくのです。
そういう状況があるが故に、英語の授業の始めの方でこの文が出てきてしまうハメになるのでしょうが、困ったことにその後に実生活で自然に応用していくのが難しいのです。

このたぐいの文を使うその他の状況は…あるいは手品でもやっているとき?
なにかの実験などの手順を説明しているとき?
ああ、テレビショッピングとかで商品を紹介するときにもあるかな。
ともあれ、けっこう「特殊な」場面しか思いつきませんね。

でも、似たような文構造でも、
This is my pen.
ならばとたんに「自然」になります。ほかにもいくつかあるペンと区別して
「これ」は「私の」ペンだ、と言っている状況だと自然に思えるから。
最近の「英語の第一歩」はThis is a penではなく、このような代名詞の所有格を使うようになっているようですが、これならもう一つの大問題である「不定冠詞(a)」も避けられてよいですね。

こういう諸々のことを、「実感」して「ピンと来る」ようになるためには、act out、つまり「実際にやってみる」が不可欠です。
簡単ですよ。
そこらにあるペンを取り上げて、とりあえず
This is a pen.
と口に出してみて下さい。
自分でも
「……で?」
という気分になるから(^_^;)。
ここであとに続く内容は、やはりそのものについて何らかの紹介を続けるというぐらいしか思いつかないでしょう。

でも同様に、そこらにある本をとりあげて
This is my book.
と言ってみましょう。
すると(英語でなくてもいいですが)
「あなたの本はそっちだよ」
とか
「これはこの間古本屋で買ったんだ」
とか
「読み終わったら貸してあげるよ」
とか、とりあえずそこにつなげて言いたくなることも思い浮かぶはずです。
(ちなみに、This is the book I bought yesterday. 「これが昨日買った(例の)本なんだ」のように限定したアイテムに言及するのなら自然です。This is a pen.の問題点は実は冠詞の「a」のほうにもあるのですが、これについては後ほど改めて)

また、ここで
「取り上げて」言う
のは大事です。
「手元にあるモノを指し示して紹介する」のが this  なので。thatを使ってみたければ、相手の手元にあるモノや、とにかく自分の手元にはないモノを指や目線で指し示しながら
That is~と口にしましょう。

まずはこのthis とthatの感覚を身につけることが、結果的に「それとは違う種類である」itの感覚を理解する助けになるかもしれません。
(ならば It とはなんなのか、ということはまた別項にて)

なにをあたりまえのことを、と思う方もいるかもしれません。
でも、英会話学校で30年教えてきての実感として、this やthatを口にするときにまったくなんの指し示すアクションも、その気もない、という生徒さんがほとんどなのです。そのことは「分かってない」ことの如実な証拠と言えます。感覚が身についていれば、たとえテキストをなぞっているときであっても、そういうアクションはわずかでも本能的に出るはずだから。

英語なら「I」だけなのになぜ日本語には私とか俺とか僕とかめっちゃ色々あるのか、のヒミツ

さて、ここの項目のタイトルは「代名詞のヒミツ」ですが、改めて、代名詞とはなんでしょうか。
 「名詞」の「代わり」に使うものですよね。最初に何かにスポットライトを当てたり、固有名詞を持ち出したりして、互いに何(誰)について話しているのかの共通認識が出来たら、その後は代名詞を使うのが英語の基本です。


 何(誰)について話しているかの共通認識が出来ないうちにいきなり代名詞を使うと「? どれ(だれ)のこと?」となってしまいます。だから初対面の人同士を紹介する時など、いきなりShe is Leila.とか言うのは不自然。前項で書いたようにこういう時はThis is Leila.と言います。その後で話題を続けるのにsheを使って行きます。

 日本語における代名詞は?彼とか彼女とかですね。でも、実は日本語には(英語的な)代名詞というのは必要ないし、あまり使われていません。通常は変に代名詞を入れると不自然な感じがします。彼、彼女というのはどちらかと言うとboyfriendとかgirlfriendのことを示す方がアリです。 英語から日本語の翻訳をするときも、he とかsheを彼、彼女といちいち訳すと「いかにも翻訳調」になってしまいます。「文型と品詞のヒミツ」で書いたように、日本語は基本的に主語がないので、互いの共通認識が出来ている人やモノはもういちいち言わないのです。つまり英語の代名詞は日本語に訳さないのです。

彼、彼女の代わりに、その人の名前を使い続けたり、「あの人」「この人」みたいな言い方をしたりします。相手に呼びかけるときだってそうですよね。youにあたる「あなた」という言葉は使うのになにか違和感がないですか? むしろ奥さんが夫さんを呼ぶ時の言い方ですよね(笑)。呼び掛けには使っても、文の要素としてはなくてもいい。家族だったら家族の役名?を使う。自分のことですらそうなります。「今日はお父さんが遊んでやろうか」とか。

 相手についても自分についても、英語はそれぞれ 「you」「I」の1語で済むのに、日本語にはめちゃめちゃ色々ある。要するにどれも、英語的な意味での「代名詞」ではないのです。自分の名前、家族の役名、そして立場的な呼び名がいつの間にか自分を表す語になったものや。ちなみに「私」という言葉は元々は「おおやけ(公)」に対する「個人」を表す言葉だったそうです。もっとさかのぼれば単に「わ(我)」。つまり「自我」ですね。俺は「ワレ」の転じたもの。ワレはワタシとルーツや意味合いが同じようなもの。ちなみに僕、は「しもべ」で、役割を表している語ですね。

日本語について書きすぎるのはここの趣旨と違いますが、それだけ英語と日本語は違っているということを理解していただくために書いています。
言いたいことは、「日本語には代名詞はない、が英語では代名詞がとても重要」という一点です。「文型と品詞のヒミツ」では「日本語には主語がない」と書きましたが、だから代名詞も要らなくなるわけです。でも英語では主語が必要。何を主語にするか、が肝要になります。

上で、「英語の代名詞は日本語に訳しません」と書きましたが、逆に言ったら、日本語から英語にするときは存在しない代名詞を発明しなければならないことになります。ここに日本語を母国語とする人が英語を学ぶ困難があります。
困難はありますが、その困難の正体が分かれば攻略もできる、というものです(この思いこそ、私がこんなサイトを作っている一番のモチベーションです)。

難物だけど実は便利な “you”

人称代名詞についてもう少し話します。it は手強すぎるのでもう少し後でね。

日本語には英語のような主語がなく、代名詞もない(まあいささか乱暴な言い方ですが)ので、日本語を母国語とする人が英語を書いたり話したりするときは、まずそこに留意しなければなりません。慣れて行けば自然にできるようになりますが、いまいち上手く英文が出てこない、という人はぜひ意識してみてください、何を主語とすればいいか、ということを。

何が(隠れている)主語なのかというのはちょっと考えれば分かることが多いですが、意外にも I や you が使いにくいかもしれません。
I については、自分のことであるがゆえにむしろ主語(主体を)意識しにくいので、意外に出てこなかったりします。
What did you do yesterday?
とか聞かれて、
昨日は学校に行った、と言おうとして日本語の語順のまま、”yesterday, school go “とか言ってしまう初心者のなんと多いことか(チコちゃん風に)。
初心者のうちはとくに自分が主体である文を言うことがとても多いと思うので、Iが主語!(かもしれない)ということをできるだけ意識してみてください。まあこれは「文型」の問題でもあるわけですが。

さすがにそのくらいできるよ、という人は、次にyou を攻略しましょう。
youって何?
「あなた」でしょう? 当然だよね!
ところが違うのです。いや、もちろん広い意味ではそうなんですが。

試しにこの↓文を英語にしてみてください。

「新聞を読むと、世界のことがよりよく理解できます」

もちろんここでは話の流れから「そうかyouを使うんだな」とお分かりでしょう。
If you read the newspaper, you will understand the world better.


もしこの英文の方を先に提示して、日本語に訳してくださいと言うと、かなり多くの方が「もしあなたが新聞を読んだら、あなたは世界のことをよりよく理解するでしょう」とやるはず。でもこの文がなんとなく不自然だというのはわかりますよね? 

この英文のyouという主語は特定の相手をさしていません。不特定多数の人々を相手にしているのです。不特定多数でも相手は相手なので、二人称のyouが使われます。とはいえ「相手」というからには話しかける対象であるわけで、これは範囲は色々であれど自分のコミュニティに属する人々です。 自分のコミュニティに属していない「人々」については、3人称のtheyを使います。

「オーストラリアでは英語を話す」
They speak English in Australia.

オーストラリア人でなければこう言います。
自分の属するコミュニティでも、他のコミュニティとの対比が意識されていればweが主語になるでしょう。上の文はオーストラリア人ならWe speak English in Australia.と言うところ。


でもどれもこれも、日本語ではよほどでない限り使わない。「あなた」も「彼ら」も「私たち」もどこかに行ってしまいます。
いささか乱暴な言い方であるのを承知で再三ですが言います、英語の代名詞は日本語にはない。少なくとも厳密に合致した訳語はありません。Heは「彼」ではなく、Sheは「彼女」ではなく、youは「あなた」ではなく、Iすらも「私」ではない。
He=「  」 
She=「  」 
you=「  」 
I=「  」 
They=「  」 
We=「  」 
It =「  」
なのです。

これも繰り返しになりますが、だから日本語から英語にするときは空白である部分に代名詞をひねり出さなければならないのです。
そのときに、初学者には盲点でも、慣れたらこんな便利なものはない!のが you というわけです。

(この辺のことを実感しながら学習できるドリルを現在準備中。coming soon!)

アナタもワタシもわかってる、のに日本語ではみんなわかってない「it」


さて、代名詞の王様とでもいうべき恐るべき(?)存在、それが “ it ” です。
マイケルジャクソンが、自ら ”This is it.”「これで最後だ」と銘打って行おうとしたロンドンでのコンサート、そして奇しくも本当に彼が人生の最後を突然に迎えてしまった後に作られたドキュメンタリー映画にもそのタイトルがつけられていたのを覚えている方も多いでしょう。

上で書いたように、This is it.  は「これで最後だ」という意味です。That’s it. という形で用いることもあります。
え~何で?
it には「最後」って意味もあるの?
そうですね、あると言えばあるし、ない、つまりこれはあくまで「意訳」だ、と言ってもいいですね。


it は「それ」という意味、と習っただけでは、こういう表現は「特別なもの」になってしまいます。でも実は全然「特別な」使い方ではないのです。
なにしろ日本語にはないコトバ。
「it」=「   」なのです。


じゃなんなのよ。うーんほんとに説明が難しい。
根本は、「アナタもワタシも、何について話しているのかを分かってる、例のあれ」なんですよ。

  「アナタもワタシも、何について話しているのかを分かってる、例のあれ」は、時には具体的なモノを指すでしょう。
“What’s this?”   
“It’s a pen. ” 

これは何?と聞かれて、その話題になってるモノってのは、ペンですよ、と答える。
ここで中学の教科書では「それはペンです」と訳して、巻末の単語リストでは「it  代名詞 それ」とか書いてある。でも何度もしつこく言いますが、「それはペンです」って、間違ってはいないけれど、あまり日常生活では聞かないですよ。「ペンです」だけで済ますでしょう? 「ああ(それ?)、それはペンです」って言いたいときは英語ではむしろ “That’s a pen.” と言うんですよ。


「アナタもワタシも、何について話しているのかを分かってる、例のあれ」は、時には「その場の全体の状況」を指すこともあるでしょう。天気などにit を使うってのはそれですね。
” It’s cold, isn’t it? ”   
「寒いですね~!」  
もちろん日本語に訳しません。でもおかしいですよね、訳したり訳さなかったり。
だから、ほんとうはいつだって訳さないんです。だって日本語にないんだもん。


「アナタもワタシも、何について話しているのかを分かってる、例のあれ」は、「ここのところ気にかかっている懸案事項」とか「いま肝心なこと」  というようなことを指すこともあります。
“That’s it !”
「それだ!」
相手の言ったことを指して「それこそが私の言いたいこと/肝心なことだ」というわけです。


It ~to 構文とか、it ~ that 構文 とかいうのを習いましたよね。そして、その it は「形式主語」と呼ばれるというのも覚えているでしょうか。
”It is important to think about differences between English and Japanese.”
「英語と日本語の違いについて考えるのは大切です」
この it を形式主語、といいますが、そもそも日本語から見たら英語の主語はみんな形式主語だといってもいいくらいです。ここでむしろ「それ」を使って、「それは重要なんですよ、(それが何かっていうと)→つまり英語と日本語の違いを考えることですけどね」みたいな感じ。ちなみに to はいつでも「→」というイメージです(別項で書きますが)。ここでも it はやはり、漠然とした全体の状況とかの「 アナタもワタシも、何について話しているのかを分かってる」を指しているのです。


そしてThis is it! 「これで終わり」ですが、「終わり」というよりほんとうは「これで全部」というようなニュアンスでしょう。「アナタもワタシも知っている、ことの一部始終」を指している。マイケルジャクソンのも、これまでたくさんやってきた、けれど今度のこれで全部、これが「集大成」という意味が込められているはず。だから単に “This is the end.” というのとはちょっと違うと思います。


日本語では言わない、「無いコトバ」が英語では、「最も肝心」ですらある、ということ。これが本当に日本人にとって厄介なんです。でも前の項でも書いたように、敵(?)を攻略するには正体まず知らなければ!です。


ちなみに、中学生や小学生で英語を習い始めた子供にこんな理屈を伝えるのはかなり無理ですよね。だから私は、本当はそのくらいの年齢ではまだ、日本語の逐語訳とかをしない方がいいとすら思っています。it = それ と初めに教えてしまうから混乱する。小学生で英語を始めるのもいいけれど、小学生ならなおさらです。だから教科書の「書かれた英語」ではなく、会話から入るほうがいい。声や口調のニュアンスでも意味は伝わっていく。すぐにわからなくても、繰り返し繰り返し場面の中で使っていくことで、子供は状況ごとその意味を(状況を離れた意味、というのはまたそれはそれでナンセンスですし)会得していく。まちがっても「これはなんですか」「それはペンです」なんて教えてはいけない。さらに、別項でも書いた「This is a pen」なんてナンセンスを初期に教えてはいけない。でも今の体制ではそう教えるしかないんだけど…。(´;ω;`)ちなみに、PPAP(ピコ太郎)はまだましです。てかあれなら意味がある。むしろあれを積極的に教えるべき。ディスイズアペーンが意味を持つ稀有な状況だから(笑)。すべてのアイテムにあれをやるといいね。
This is a book!  This is a knife!  OoP!  bookknife! 


中学生でも高学年になって、ここで書いたようなことが理解できるようになってきたら、逆に今度はきちんとそのように丁寧に説明して正体を明かす必要があるでしょう。大人になって学び始めた人はますますそうですね。

実践ドリル① 主語の I を意識する。


しばらくのあいだは主語を意識して「作文」をしてみましょう。
作文、と言っても「自分にあまり関係ない」状況を言っても仕方がない。
自分がいかにもいいそう!ってことを自分でピックアップして作文してみてください。そしてその状況が来たらすかさず言う!なるべく単純なことから始めましょう。

まずは、寝起き篇。こういう「つぶやき英語」をリスト的に載せている本も出版されていますが、まずは自分でトライしてみてください。そのあとで解答例(一つとは限らない)を別項として載せます。自分で考えるというプロセスを経ないと、いくら網羅されている本を見ても覚えられないし、応用もできないし、使えません。

① あ~よく寝た!今日はなんか気持ちいいな。
② う~なんかあまりよく眠れてない。まだ眠いなあ…。
③ なんで毎朝起きると首とかあちこち痛いんだろ。
④ 夕べ飲みすぎたか…二日酔いっぽい。
⑤ うわ、怖い夢見てた! 夢で良かった…。
⑥ なんかいい夢だったな。正夢になるといいのに。
⑦ 二度寝しちゃった。寝すぎるのもまた疲れるのよね。
⑧ ひ~寝過ごした! 急がなきゃ!
⑨ もう少し寝てたいのになあ…。朝はつらい。
⑩ あと5分寝かせて!


……最近の私はめっちゃ朝に強くて(←歳のせい?(^_^;))、眠くてつらい~なんてことはめったにないんですが、若いころはやっぱりひーひー言ってましたね。それはともかく、これは「例」です。みなさんそれぞれに自分のバリエーションがあるはず。それをぜひ一度、英語にすることにトライしてください。いっそ、朝目覚めたら、まず英語で何か言う!なんて課題を自分に課すとかね(それで疲れてまた眠ってしまう?(笑))。

ちなみに、当然お気づきと思いますが、上の例、主語はほとんど(命令文的なものを除いて) I でいけますよ。どこにも「私」なんて日本語はないのにね。
ちなみに自分で作った英文は DeepL で翻訳してみるといいかもです。(日本語を先に英語に訳しちゃだめですよ。)だいたい元の日本語になればオッケー。音声も聞けるのでぜひ自分で気持ちを込めてつぶやいてみてください。